構成=川松佳緒里
ふたりの出会い、コンシャスネスの学びとの出会い
佐藤 まずは河合さんとナミさんの出会いについてお聞かせください。
河合 アメリカの大学で僕の妻とナミさんが友人だったところからです。その後、ハワイに遊びに行った際に僕もナミさんとお会いする機会があったりして、家族で仲良くさせていただいています。ナミさんと妻の共通の友人からは「なぜ、ナミと(妻の旦那である河合が一緒に)本を出しているの?」と驚かれます。
ずっと家族ぐるみで交流があったのですが、2016年9月に、突然ナミさんからものすごい長文のメールが届いたんです。「とにかくすごいセミナーがあるからインドに行きましょう!でも、インドに行くのって大変でしょ?だから私、インドの先生をハワイに呼びました。ハワイに来てください」というような内容でした。
僕たちはおとなしそうに見えるかもしれませんが、ナミさんはバレエでモナコに留学されていたり、僕はスピードスケートで国体に出場していたり、いわば「スーパー体育会チーム」で「まず、やってみよう!動きながら考えて行動していこう!」というタイプなんです。ですから、そのお誘いにも「行ってみよう!」という気持ちになったのです。
佐藤 ナミさんは、どんな考えでハワイのセミナーにお誘いしたのですか? 長文のメールを送ったときのお気持ちを聞かせてください。
ナミ あのとき私は「コンシャスネス」の意味がまったくわかっていない状態でした。今回刊行する『世界のエリートが実践する心を磨く11のレッスン』(以下『心を磨く11のレッスン』)に詳しく書いているのですが、「トランセンデンス」という「すべてはつながっている」「すべては一体である」というものを経験して、とにかく「これはすごい」と思ったんです。
「コンシャスネス」の学びは意識の学びで、フェンスを越えるような感覚があるんです。その感覚を知る前は、そういう世界があったなんて知らなかった。それが、フェンスを越えて行ってみたら「こんな世界があったの!」「世の中ってこういうふうにできていたの?」と驚きとともに理解できたのです。
コンシャスネスというのは頭で理解しようとしたり、言葉で表現しようとしてもうまくいきません。素晴らしくて伝えたいけど、何をどう伝えていいかわからない。そんな状態でしたね。
それまでも私は、いろいろなことを学んできていて。自己啓発系のものも、実にさまざまな人のオーディオテープやCDを暗記するまで繰り返し聞いていたんです。そんな中でコンシャスネス、トランセンデンスを体感して、「この体感は何にも勝るものだ」と思いました。これを知っている人と知らない人とでは大きな違いがあるとも思いました。そこで私は何人かの大切な友人に長文のメールを送ったんです。すると、誰からも返信が来ないなか、河合さんだけが「行きます」と言ってくれたんですよ。
その経緯からも、河合さんは直観力とか行動力に長けているんだなとわかります。行動することに恐れがない。それはすごく大事です。世界的なベストセラー『チーズはどこへ消えた?』(スペンサージョンソン[著]、門田美鈴[訳]、扶桑社、原題 “Who Moved My Cheese?”)を読んだことがある方はわかると思うんですが、人は2つのタイプがいるんですよね。最初の2人は周りの変化に怖じ気づかずに動けるタイプで、あとの2人はなかなか動けないタイプ。とくに4人目はまったく変化を嫌うタイプで、なかなか時代に追いついていけない人。世の中の変化が激しい中、いかに私たちは1番、最低でも2番目でないといけないかということを説いている本ですが、河合さんはそれができる人なんだなと思いました。「すごいものがあるよ」と言っているのに誰もそのチャンスに手を伸ばそうとしない中で、彼だけが返事をくれたわけですから、「信じてくれてありがとう。とにかくハワイで開催するセミナーに来てくださいますか」という感じでした。そして、今に至ります。
河合 かつての僕は「瞑想している時間があったら、筋トレをしたほうが強くなれる」という価値観を持っていたり、営業だったら「一軒でも多く訪問したほうが成果が出る」というふうに考えるタイプでした。それが、ナミさんとの出会いや心の学びとの出会いによって変わりました。ただ「動けばいい」とか「成果を上げればいい」のではなくて、「何のために」「何を意識して」過ごしていったらいいのかを学びましたし、瞑想の大切さもわかるようになりました。
また、僕自身、自分を高めていくことに関しては、スポーツをやっていたころからずっと考え、行動してきていました。どうしたら強くなっていけるのか、どうしたら緊張しないのか、本番で成果を出せるのかということなどを追求してきたつもりでしたし、前職は人材教育のコンサルティング会社勤務でしたから、能力開発、自分自身を高めていくことはやってきたつもりだったんです。
そして、ビジネスリーダーの方がさらなる成功を求めて(前職で主宰していたセミナーに)お越しくださるのですが、ふと、いろいろな話をしていると、ご自身の経済的な成功や地位的な成功について、「今、俺は〇〇の中で1位だ」「同業の中では〇位だけど、〇年以内にトップを目指す」というふうに、比較をしながら語られていることに気づきました。エグゼクティブなお客様であっても、ご自身の本当にやりたいことと、今やっていることにギャップを感じていらっしゃったり、実は家族や親子の人間関係に深いテーマを抱えていらっしゃったりする。それに気づきながらも、当時の僕は、ただお話を聞かせていただくことしかできませんでした。
それが、ハワイでのインドの先生を招いて行われたセミナーに参加して、なんとなく「この学びを追求していったら、その答えが得られるんじゃないかな」、つまり、どんなふうにそれを捉えて感じていったらいいのかの答えにたどり着けるんじゃないかと感じたんです。すると、ナミさん、さすがだなと思うんですが「じゃ、次はインドですよ」って言うんですよ。(笑)
ナミ 私にはビジョンがあるんです。「日本にこのコンシャスネスを届けなくてはだめだ」というビジョンが、山の頂上に旗が立っているように見えていました。「これをお伝えすることで、どんなに人の心が楽になるだろう」という想いや、「私じゃなくてもいいから、とにかく誰かが伝えてほしい」という想いもありました。なので、とりあえず誰かをハワイに呼んで体験してもらわなくてはと思って。ハワイに呼ぶときの長文メールでは「河合さん1人で来てください」ではなくて「河合さんプラス5人ぐらい連れてきてください」とお呼びしたんです。そうしたら何人かちゃんと連れてきてくれましたね。それでハワイの次は、「10人の日本人の方を連れて、一緒にインドに行きましょう」と河合さんに提案したんですよね。それで、みんなでインドに行きました。
佐藤 そのたどり着かれたところが、まさにナミさんと河合さんの第1作目のタイトル『世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業』にもあるように、世界的企業のCEO、ウォール街の大物投資家、アラブの王族など、世界中のエグゼクティブが集まる場所だったということなんですよね。
前作からより具体的事例を盛り込んだ充実の第2作
佐藤 一般人からすると、億万長者になるというのは「お金持ちになって成功している」ということなので、さぞかし幸せだろうと思うのですが、でも億万長者の方々も心の中に悩み、葛藤、苦しみを抱えているわけですよね。ですから、もし私たちが億万長者の悩みを知ることができれば、もっと私たちも本当の意味での人生の成功にたどり着きやすくなるのではないかと感じました。インドでのその学びの場で、億万長者の人たちは何に悩み、どうやってそれを乗り越えていったのでしょうか?
河合 もちろん「お金がない」ことは悩みになりますが、「お金を持っていれば持っているほど、悩みって増えるんだな」と感じました。今回のコロナ騒動でも、家族で一店舗を経営されている方ももちろん大変でしょうが、社員を何百人何千人と抱えて何百店舗をも経営されていたらもっと大変だと思うんです。持っていたら持っていたなりに、「しがらみ」も多くて一筋縄ではいかない。表面的な地位や得るもの、社会的評価が高くなるのと同じだけ充実度や幸福度が高まるわけではないと強く感じました。
また、社会的な成功を収めている方々は、そのぶん、いろいろなものを捨てて成功に向かってきた方が多いと思います。もちろん、何かを成し遂げていくときにはそういう経験も必要ですし、僕もたくさんのことをあえてせずに、1点に集中する意味も価値も理解しているつもりです。しかし、バランス感覚や、何のためにそれに取り組んでいるのかを考えることは大事です。「誰かに自分を認めさせたい」とか、「あんなやつに負けたくない」というモチベーションで行動していくケースは少なくないと思いますが、それだと長続きしないし、達成した瞬間にポキッと心が折れるというか、あるところまではアクセル全開で行けても、パタッとアクセルを踏む力が出なくなる。そうした状況を起こさないために、心の奥底に刺さっているトゲを抜いていくような、見たくないものを見つめてクリアにしていくことの大切さや方法論を学びました。
そして、これは億万長者だけがたどり着く心の授業ではなくて、億万長者“も”たどり着く心の授業。お金のあるなしに関係なく、日々、どんな方々も苦悩をクリアにして、美しい心の状態で過ごしていけること。そこにフォーカスしたら結果は後からついてくる。そうしたことを、自分自身のそれまでのうまくいったことや失敗した経験などとも重ねながら学びました。
きっとナミさんのところにも日本人はもちろん、海外からもたくさんの方が相談に来られていると思いますが、どんな相談が多いですか?
ナミ ハワイの方もいますが、今は河合さんからご紹介いただくことが多いので日本人からのご相談が多く、あとは海外在住の日本人の方が「誰にも言えないけどオンラインだったらカウンセリングできる」ということで連絡がくることもあります。ご職業は、それこそ億万長者の方もいらっしゃれば、学生や一般の会社員の方もいます。実は相談の中身は、あまり変わらないのです。ただ、度合いが違うだけ。会社員で自分1人がどうなるのか不安なのと、5千人の社員を抱える経営者が5千人の家族の人生をどうしてしまうか悩むのとでは、度合いが違いますよね。でも、悩みのパターンは似てきます。
前作の『世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業』では、4つのステップについてご紹介しています。ウォールストリートで働く機関投資家のリチャードさんの苦悩や、ごく一般の方の追われている感覚をどうすればいいのかとか、部下の失敗にイライラする経営者の苦悩、コンプレックスを抱えている女性の話、身体にケガを負ったフィリピン人女性の話など、さまざまな苦悩がありますが、「この4つのステップをすることでぜんぶ解消できるんだよ」ということを詳しくご紹介したのが1作目です。
1作目が発売されてから、さまざまな意見や質問が寄せられるようになりました。前作の本だけでは解けない問題ももちろんあります。たとえば、人の死とか不倫の問題、人に騙されたという悔しい気持ち、数万円ではなくて億単位の大金をなくしてしまった場合。そのような大きな悲しみや大きな苦悩。さあ、それをどのようにして解決したらいいのかは、4つのステップ以外にもいくつかヒントとなる知恵があるんです。その「コンシャスネスの知恵」を散りばめているのが2作目となる今回の『心を磨く11のレッスン』なんです。
『心を磨く11のレッスン』では、不倫した側・された側の苦悩について詳しく書いたり、よくある夫婦の問題のパターンも取り上げています。具体的には、女性は「キャリアも子育ても頑張りたいけれど認められていない」というようなフラストレーションと、それを理解してくれない旦那様に対してのフラストレーションを抱えている。だけれども旦那様からすると、なぜ今、子どもが小さいのにそんなに頑張らなければいけないのか理解ができない。意味不明の彼女の苦悩をどうしたらいいのか、というような悩みがある。そうしたあたりを詳しく書いている章もあります。あとは、「ワクワクする心やエキサイティングな心は苦悩の心なの?美しい心なの?」といったことや、パートナーシップはどのようにうまく活かせるものなのか。さらには、心をつなげるってどうするの、というテーマ。たとえば、経営者が社員と心をつなげたいときはどうすればいいのか。どうやったら社員の気持ちをくみ取ってあげられるのかがわかれば、ブラック企業と言われるのを防ぐこともできます。さまざまなことを詳しく、コンシャスネスの観点からレベルアップしてお伝えしています。
(第2回に続く)
(2020年9月5日 東京と仙台とハワイをZoomでつないで開催)